平成12年2月10日
生ぶ無銘古剣 伝天国工房 重文内定品 研磨 某有名研ぎ師×で研ぎ直し→篠崎研師 研ぎ上がり 二尺一寸五分で中心に反りあり。打ち叩いて付けた反りではない。刀身にも弱冠の反りがある小烏様式で地鉄板目が流れて柾がかり一部綾杉肌も見え、良く詰んで地沸付き最高に練れた潤いのある青黒く冴えた鉄。直ぐ調の刃は小乱交じり沸付いて金筋、砂流しが出る所もあり縦の働きもあるが、駆出し部分があり沈みごころで叢もあり、最高の地鉄に比して未発達。焼き落とし長め。帽子焼き詰め。一連の古大和鍛冶の範疇に収まる出来で時代は平安中期頃。製作同時期に付けられたハバキは正倉院の遺物と全く同じの朱に金、菱形の非常に薄い物。
刀銘 長曾祢興里入道虎徹(ハコ虎) 研磨 藤代興里研師 研ぎ上がり 二尺二寸五分 寛文新刀としては姿がよく優しさのある刀。地鉄は板目よく詰み地沸つき、刀身の中央部に肌流れ柾がかり黒味を帯び古風で一見古刀の北陸物に紛れる肌。刃紋はハコ虎には稀有な匂い出来直刃で打ちのけ金筋がかかり、刃中は働きが無く粟田口の刃の如く明るく冴える。この明るさは新刀随一。中心は朽ち込みがあるが、錆色浅く強い独自の錆味で皮鉄をそのまま延ばして仕立てた炭素量の多い鉄である事が察せられる。古刀大和物に紛れる出来で地刃が明るい。
朱短刀銘 光包 大徳川家伝来 特別重要刀剣 家康室 築山御前遺愛品 研ぎ上がり 一尺強の寸延びでうつむきごころある鎌倉末期の短刀姿。小板目詰んで地沸つき地景絡んで底に沈み青く冴える。ハバキ元に来地鉄が現れるが研磨で目立たない様に伏せてある。刃紋広直刃で小沸よく付き足、葉がよく入り元は互の目を焼く。古鞘に「中堂来光包 長壱尺壱分有之 代金弐百枚」 「延宝八申年十一月廿八日 於 御本丸 西丸 御挨拶御祝儀之際 常憲院様より被進 百六拾壱」とあり。今川家より入って家康の室となった築山御前の愛刀で延宝八年五代将軍綱吉の嗣子徳松が本丸から西の丸に移った挨拶に綱吉を訪れた際に鉋切長光と共に賜ったが三年後に徳松が夭折したため、再び将軍家に戻り終戦後まで大徳川家に蔵されていた物。来国光の上々作に匹敵する出来である。  
短刀銘 備州長船家助 裏銘 正長二年八月日 九寸七分八厘の延びこころで反りが無く一見して室町初期備前姿。初期物によく出る刃寄りの棒映りが立つ。地鉄小杢よく詰むが護摩箸彫刻の間に疲れ肌が出る。
短刀銘 肥前国正広 九寸二分で身幅広くずんぐりとした慶元新刀の名残を示す刀姿。地鉄板目に杢混じって肌立ち地色青く潤いのある綺麗な地鉄。刃紋匂い深く乱と乱の間を直でつなぐ。以前同じ短刀が銘が駄目という事でハネられた物を私は正真を信じて格安偽物扱いとして入手したところ鍋島家の文書で新たな記述が発見され、現在では正真認定され15倍の値で出回っています。銘の変節期は注意が肝要かと思います。
古剣銘 助次 重要刀剣 七寸七分六厘の古剣造で平肉たっぷりつく。地鉄小板目よく詰み微塵の地沸がつき京物と紛れるような部分と柾が強く現れる部分があって僅かに映りが立つ。刃紋匂い出来で沸づくところもあり小のたれ、小互の目混じりの小乱で小足、金筋かかり柾肌に沿って砂流しかかる。帽子焼き詰め。
刀銘 兼元 鳥居反り強く美濃物にしては美しい姿。地鉄まこ六上作に匹敵するような綺麗に詰んだ板目では刃縁流れる。刃紋は三本杉がはっきりと技巧的になり後代作である事は間違い無いが、地刃共に清閑兼元や二代孫六に劣らず。寒山鞘書あり。
平成12年3月22日
脇差銘 長曾根虎鉄入道興里(ハネ虎) 反り浅く突っ立った姿。地鉄鎬地柾で平地厚く地沸つき板目流れる。刃紋、匂い口柔らかくふっくらするがやや冴えが足りない様な、、、差し裏帽子が完全な三品帽子。先月拝見したハコ虎とは焼き刃に大きな違いがあって面白い。国路と共に重刀審査に出すそうです。
短刀銘 安吉 重要刀剣 身幅狭くふくら枯れる鋭い姿。地鉄激しく沸つき板目詰んで肌立って白気映りたち、焼き刃小沸よくつき砂流ししきりにかかり帽子突き上げて深く返る典型的な左一門出来。京物の美しい静の地鉄とはまた違った動の魅力溢れる地鉄。
薙刀無銘 古宇多 ふくらが張らず反り浅い古い所の薙刀。一見して美しく鋭い姿で地鉄杢目肌に板目激しく流れてその流れに沿って砂流し激しくかかる。差し表一部わずかに肌荒れあるも薙刀の魅力を再認識させてくれる気品溢れるよい出来。欲しい!
平成12年4月8日
小柄銘 夏雄 初めて手にとって拝見しました。月夜に狸図で狸部は毛彫り乍、流石は名人!本当にコロコロ動き出しそうです。しかし何処がどう違うんでしょうか、この躍動感。
小柄銘 後藤一乗(花押) 流水に燕図 流石後藤の魚子地はどこまでも細かくて美しいです。
今回はクリスティーズオクプレビューで約200点の小道具を拝見してきました。主に1920年代からイギリスに流出した物でダンカン・ペレスフォードジョーンズ氏旧蔵品です。(現在も健在!)今回が80年ぶりの郷帰りでした。会場がガラガラなのを良い事にほぼ全ての品を拝見させてもらいました。係員さんありがとう!(警備員の目が必要以上に光っていたような、、、) 今回鑑賞ノートに掲載しようと思いましたが多数の上、その時の印象が全て思い出せないので断念します。5月中旬に競売参加者用の詳細写真の入ったパンフが届く予定なので主要写真はアップしたいと思います。80年振りに我が作品達が故郷の土を踏み、泉下で眠る金工達もさぞ嬉しかったでしょう。夏雄の雄筆な銘を見た時は胸が震えました。6月にロンドンで開催されるこのオクで更に世界中に広がるでしょう。出来るならば全てを日本人が落札して日本に留めておきたいですね。皆さん参加しましょう!有志が集まってお金を出し合い落札して刀剣博物館に寄贈ってのは、、、無理かなー。。。まあ世界の国々に流出しても偉大なジャパニーズの技術を見せつけてくれれば良いですね。
平成12年4月10日
無銘太刀 粟田口国吉 特別重要刀剣 二尺二寸三分余で身幅今だ広く腰反りギューンと深く、強さと上品さが最高レベルで同居している。生ぶの姿はどんなに素晴らしかったのでしょうか!地鉄は平肉も鎌倉末期特有の蛤刃の肉置きが健全に残り、小板目が詰んで細かな地沸が砂を撒いた様に付き、底に細かな地景が沈み限りなく冴え渡る。刃紋小沸出来直刃小互の目まじりの乱で足、金筋かかり匂い口が明るく、刃中匂いで覆われて冴える。遠くから見ても名刀!と分かるような日本刀最高峰の作。
脇差銘 山浦真雄 裏銘 安政丁己八月日 一尺五寸 一見して山浦物と分かる身幅広い大切先姿の南北朝写し。地鉄板目に杢が詰み一部に柾が流れ地沸よくつき僅かに白気る。刃紋小沸出来、足長互の目乱で砂流しかかり金筋と言うにはやや光の足りない白髪筋が長くかかる。保存が大変よく特に中心には突き止め玉が完全に残っている。弟の清麿と比べると姿を除き華やかさが足りないのは技術的差異と言うより性格の差異が如実に現れているような気がする。
無銘脇差 正宗 特別重要刀剣?重要?失念 久々に拝見しました、本物の純沸出来相州伝。一尺三寸三分 南北朝期には珍しい鎬造り小脇差。元来は一尺四寸程度。地鉄大板目肌よく詰み地景からみ異鉄混じり、地斑様の叢が刃中にまで及び、肌潤いがあって青く冴える。刃紋沸よく付き沸匂深く、刃中金筋、砂流しがかかり変化が激しい正宗後期作の馬の歯乱。まるで増水した濁流を見るが如くの景観。ハバキ元に梵字。
脇差銘 藤原正弘 一尺一寸七分 身幅広く中間反りのついた慶長頃の小脇差姿。地鉄板目に杢まじり棟より柾が強く現れ地沸地景つきザングリとした堀川肌。刃紋小沸よくつき匂深いのたれで砂流し金筋しきりにかかり匂い口沈み心で刃中は明るい。寡作の刀工だが非常に出来がよい。
脇差銘 美濃守藤原政常 一尺六分 地蔵帽子を除けば五字忠時代の忠広に見える。杢目肌に板目まじり棟寄り柾目で細かい地沸がつき綺麗。刃紋直刃に小のたれまじり小沸よくつき二重刃風の湯走りがかかる。これまでに何度か同工の作を拝見してきましたがいずれも出来良く平均点の高い刀工です。
平成12年6月17日
平成12年6月24日
左より、秀岸銘五字忠(重要刀剣) 備前国住左京進宗光 備前国住長船永光
平成12年6月29日
短刀銘 日州住兼吉 元亀三年八月日  重ねが極厚の鎧通し姿 銘鑑にも一振りのみ掲載されている超珍品。月山一派とい言う事ですが全くそうは見えず。地沸厚く良く練れた地鉄は見事で無名刀工の面目躍如といったところ。
平成12年7月2日
市長杯争奪刀剣鑑定大会出題刀 左より 紀州住文殊重貞(箱刃風を直刃でつなぎ一見二代兼若。詳査すると北国物程地鉄に黒味がからない。 河内守国助(一見して中河内と看れる拳形丁子 地鉄見事) 播磨守輝広(地鉄ややざんぐりし兼房丁子風の乱) 以南蛮鉄越前康継(地鉄ややざんぐりし純然たる匂いの締まった直刃 一見山城守国清に見える) 美濃守藤原寿格(無地風地鉄に菊花丁子玉を焼く 一見大坂新刀) このように粗見すると引っかかってしまう物が多い苦出題刀でした。個人戦 人位 団体戦 天位を獲得しました。


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